梅田で用事を済ませた帰り道、JR大阪駅御堂筋口のあたりでスケッチブックを持った男子を見かけた。
大きなリュックを背負っており、防寒着は着ているものの、なんだか寒そうにしている。
「ヒッチハイクの旅でもしているの?」
とたまらず声をかける。
「はい。そうです。」
「寒いでしょ。何がいい?」
「カフェオレで。」
「ちょっと待っててね。」
と声をかけ、近くのコンビニで温かいカフェオレを買い、彼に手渡した。
「ありがとうございます。」
「どこから来たの?」
「香川からです。」
「学生さん?」
「はい。」
「どこの大学?」
「香川大学の教育学部です。」
「遠いところからお疲れ様。」
といろいろ訊いているうちに、労いの気持ちが芽生える。
彼は春休みを利用してヒッチハイクの旅をしているとのこと。長い休みを利用して九州や中国地方をめぐり、先週は静岡や愛知などの東海地方に足を伸ばした。今日、大阪に到着し、和歌山や三重、奈良などを巡るそうだ。
「なぜヒッチハイクをするようになったの?」
「今、2回生なんですが、将来は社会科の先生になりたいと思いまして、教える生徒に自分が体験したことを伝えたいんです。」
「面白そうだね。」
「自分で運転したり、自転車に乗ったり、電車に乗るなど、いろいろ手段はあると思います。実際、かかる時間の8割近くは移動に費やすことになりますので、どうせなら、さまざまな方と触れ合いたいと思いまして、ヒッチハイクを選びました。」
「なるほどね。」
と感心するのと同時に、
「塾講師のアルバイトばかりしていないで、若いうちにしかできないことをすれば良かった。」
と後悔の念も芽生える。
「この旅で必ず行くところがありまして、それぞれの都道府県に着いたら、県庁所在地がある駅に行くことにしているんです。そこに行けば名所や人口など、いろいろなことがわかりますので、今後生徒に教えるうえでも活かせるような気がします。」
「肌で感じたことを教えるのは大事だよね。」
「これからも気をつけてね。」
と励まして、その場を後にした。
「彼のような先生に教えられたら、生徒は楽しいだろうな。」
と思いを馳せながらも、
「若い世代も頑張っているんだ。日本もまだまだ捨てたもんじゃない。俺も頑張らなければいけないな。」
と自分自身を鼓舞した。
わずかな時間ではあるが、楽しいひとときを過ごすことができた。今までの自分にはない姿を見せてくれた彼に感謝しながら、家路を急ぐとしよう。
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